――ひどい夢を見た。
この夢を精神鑑定にかけたら、一体俺のどういう精神状態が導き出せるのだろう?
自分の通う学校の真夜中の校庭で、白いホッケーマスクをかぶってチェーンソーを持った大男と
剣を持った西洋貴族風の格好をした男が斬り結んでいたなんていう、この荒唐無稽な夢からは、一体何が導き出せるのだろう?
そんなことをぼんやりと考えながら、家路についた。
学校の廊下なんかで居眠りをこいていたせいか、体のふしぶしが痛い。
後ろ手に家の戸を閉めつつ、誰もいないと分かっていながら、暗い我が家に帰りを告げた。
「ただいまー」
応えられることのない言葉は、薄暗く寂しげな廊下へと吸い込まれていった。
慣れてはいても、そこはやはり心細いような感じがして
暗い家の中を、一つ一つ明かりのスイッチを入れながら進んで行く。
居間の明かりをつけたとき、吹き込む風に揺られるカーテンを見て、窓が開いていることに気づいた。
「……全く……藤ねえだな、これは。桜も俺もいないからって、何も窓開けたままで帰らなくてもいいじゃないか」
頼れるようで抜けている、我らが姉貴分のズボラさを嘆きながら窓に手をかけたところで
なにやら気配を感じて暗がりへと振り返った。
「なんだよ……居るんなら明かりつけておくなり、いるって言うなりしてくれよ藤ね……」
一つ。藤ねえにしては背がデカい。2m近くある。
二つ。藤ねえにしては体がゴツい。筋骨隆々である。
三つ。藤ねえにしては顔がシロい。ホッケーマスクをつけている。
四つ。藤ねえにしては息がアラい。ハァハァ言って、ホッケーマスクの間からヨダレが垂れている。
五つ。藤ねえの獲物は虎竹刀である。目の前のお方は……
「……え?」
ドッドコドコドコドコドコドコドコドッドドドド …… チュイイイイイイイィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーンン!!
天井を削って木屑を飛び散らかしながら、唸りを上げるチェーンソーを振り上げた。
1・「――――同調、開始」ひとまず卓袱台を強化して、チェーンソーを防ごう。
2・「――――同調、開始」鍛え抜かれたこの肉体を強化して、この変態を殴ろう。
3・無理だ、逃げよう。
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