……ぽんっ!
『サーヴァント道場』
「よく来たな。
ここは迷える雑種共に、王たる我がありがたい助言を授けるアーチャー道場だ」
「……」
「ちなみにここは先刻死亡した小娘の住んでいた洋館だ。
このような粗末な建造物では雅に欠けるが、言峰の教会よりはマシだろう。楽にして構わんぞ」
「……何故お前がここにいる」
「……いたのか贋作者。まあ、我とてこのような舞台にたつのは本意ではない。
雑種の死後にセイバーと道場で再会し、添い遂げるつもりだったのだが……」
「――――虎に阻まれたか」
「くっ……その通りだ。道場の固有結界が発動していて、我と言えども近づけなかった。
ところでフェイカーよ、そのニヤついた笑みを力ずくで消して欲しいのか?」
「相手をしてやってもいいが……ひとまずは仕事をすませるとしよう。
『アーチャー道場』ということもあり二人でいるが
本来ならば、これは凛のサーヴァントである私の仕事だ」
「……ふん。まあいい。我の小間使いぐらいには利用してやろう。
小娘の死因説明を始めていいぞ、贋作者」
「…………今回の死因は、あのエセ神父との決着に固執しすぎたことだな。
とは言え、選択肢にこの戦闘から退却できるようなものはなかった。
教会に向かった時点で、敗北はすでに決定されていたと言うことは否定できん」
「贋作が真作に敵わぬように、多くの場合、弟子は師に勝てん。
子が、親や師に象徴される自分の命運を乗り越えることがテーマのシナリオとは言え、決着をつけるのが早すぎたのだろう」
「そもそも凛、彼女は、衛宮士郎や間桐兄妹、あちらのセイバーと違い
迷い無く自分の命運を受け止め、ある面では既にそれを超えている。
捨て切れなかった感情、微かな感傷がアダとなったわけだが、それは必ずしも未練ではない。
普段の彼女なら、その死の真相を聞こうとも気丈にふるまっただろう。
信じていたはずの相手から、極限状況において劇的に明かされたことで、初めて動揺が生じた。
それは一瞬だったが――――ランサーであるダルタニャンとの宝具による同調も相まり、致命的なものとなったのだろう」
「それがあの男、言峰の狡猾なところでもあるのだがな。
アレは本来、戦いを楽しむものではない。そうさせたのは今回の泥によるところが大きいだろう。
今回は、連れているサーヴァントが我ではないからな。
流れ込む泥を逃がす受け皿となりうるサーヴァントが
マスター以上に泥の闇に堕ちているならば、言峰自身が泥に染まるのも無理はない」
「言峰綺礼という相手、教会という場所が遠坂凛にとっての鬼門だったというわけだ。
どうやら何か、もう一転がりしそうだが……」
「あれは我の宝物庫にも無いものだな。効果として近いものはあるが……
後世に人の手によって一から作られ、その上で霊長の後押しを受けたものだ。
我のコレクションに加えてみるのも悪くない逸品だと言える」
「ほう……英雄王をしてそう言わせるか。では、これはどうかな……?」
「む。それは釣具屋で連日品切れのフ○セスーパーオートメーションではないか……!
いいだろう、望むところだ。決着をつけてくれる、フェイカー。
贋作になど興味はないが、貴様の鼻を明かすのに、これ以上に相応しい勝負はあるまい」
「……ではこれでこの道場はお開きだ。次の道場があるとすれば、おそらくマキリか本家の道場どちらかだろう」
「では、さらばだ雑種ども。この後も『Fate/star
light』を楽しむがよい」
「……さて」
「……うむ」
「――――行くぞ英雄王、釣りの準備は十分か――――」
……がらがらがらがらっ ぽんっ
『アーチャー道場』
――――End.
『フォレスト・ガンプ』